いま高校に在籍したまま通信制高校へ移るのが「転入」、退学したあとに入り直すのが「編入」です。在籍中なら転入を選ぶのが原則です。 在籍期間に空白を作らず、修得した単位と在籍期間を引き継げるため、高2からの転入でも同級生と同じ時期の卒業を目指せます。
この使い分けは学校の宣伝文句ではなく、法令に根拠があります。学校教育法施行規則第92条は、全日制・定時制・通信制の課程の間の転学について「修得した単位に応じて、相当学年に転入することができる」と定めています。
この記事では、転入と編入の違い、動ける時期、単位引き継ぎと在籍期間の通算の仕組み、必要書類、手続きの流れを、法令と学校の公式情報だけを根拠に整理します。特定の学校の制度を例に挙げる場合は、当サイトが一次情報を確認済みのN高等学校(以下、N高)グループの例を使います。なお当サイトは、N高グループの資料請求の紹介により収益を得る第三者メディアです。
本記事は第三者メディアによる解説です。制度の運用は学校ごとに異なり、年度でも変わります。最終的には必ず転入先候補の募集要項と個別相談で確認してください。
転入と編入の違い
結論を先に表で示します。
| 転入(転入学) | 編入(編入学) | |
|---|---|---|
| 移るときの状態 | 高校に在籍したまま移る | 高校を退学したあとに入り直す |
| 在籍期間の空白 | 作らない | 退学から入学までの空白が生じる |
| 受け入れ時期 | 随時受け付ける学校が多い(後述のとおり期限あり) | 時期を区切る学校が多い(例:N高は年4回) |
| 単位・在籍期間 | 修得単位と在籍期間を引き継げる | 退学時点までの修得単位・在籍期間を引き継げる |
| 卒業時期 | 同級生と同時期を維持しやすい | 空白期間の分だけ遅れる可能性がある |
転入は「在籍したまま」学校を移る
転入は、いまの高校に籍を置いたまま次の学校へ移る手続きです。前の学校の退学日と次の学校の入学日が連続するため、高校生としての在籍期間が途切れません。
実例として、N高グループの2027年度生徒募集要項の出願資格では、転入学は「高等学校在籍者(休学中含む)」、編入学は「高等学校中途退学者」と区分されています。同グループの編入・転入の解説でも、転入は現在通っている学校から別の学校へ移ること、編入は退学した人が学校へ入り直すことと説明されています。この区分は、次のH3で示す法令上の転学と途中入学の建て分けに対応しています。
編入は「退学したあと」に入り直す
編入は、すでに高校を退学した人が改めて入学する手続きです。退学時点までに修得した単位は引き継ぎの対象になりますが、退学から入学までの期間は在籍期間に数えられません。後述のとおり高校卒業には3年以上の在籍が必要なので、空白が長いほど卒業は後ろにずれます。
遅れ方は計算できます。たとえば高2の6月末で退学し、次の編入時期が10月だった場合、空白は3カ月です。在籍期間は通算で3年以上必要なので、単位が順調でも、卒業はもともとの予定より少なくとも空白の分だけ後ろにずれる計算になります(実際の卒業時期は単位の認定状況にもよります)。
すでに退学してしまっている場合は編入しか選べません。逆に、いままだ在籍しているなら、退学届を出す前に転入先を決めるのが安全です。先に退学してしまうと、選べる手続きが編入だけになり、入学時期の選択肢も狭くなります。
法令上は「転学」にあたり、単位に応じて相当学年に移れる
法令の用語では、転入は「転学」にあたります。学校教育法施行規則第92条には次のように定められています。
他の高等学校に転学を志望する生徒のあるときは、校長は、その事由を具し、生徒の在学証明書その他必要な書類を転学先の校長に送付しなければならない。転学先の校長は、教育上支障がない場合には、転学を許可することができる。 出典:学校教育法施行規則(e-Gov法令検索)
1つ目の項は手続きの主体を定めたものです。「事由を具し」は「理由を添えて」の意味で、書類はいまの学校の校長から転学先の校長へ送られる仕組みになっています(詳しくは必要書類の章で扱います)。
全日制の課程、定時制の課程及び通信制の課程相互の間の転学又は転籍については、修得した単位に応じて、相当学年に転入することができる。 出典:学校教育法施行規則(e-Gov法令検索)
2つ目の項が重要です。全日制から通信制への転校は、課程をまたぐ転学として法令に明記されており、修得した単位に応じて相当する学年に入れます。 「全日制から通信制に移れるのか」という不安に対して、制度上その道は明確に用意されています。
なお、条文が「許可することができる」という書き方であることも押さえておいてください。転学の可否は転学先の校長の判断であり、無条件の権利ではありません。だからこそ、後述する個別相談での確認が大切になります。
転入できる時期とタイムリミット
結論から言うと、転入は多くの学校で年間を通じて受け付けていますが、受け入れ日・出願締切・学年ごとの最終受け入れ月という3つの期限があります。
「随時受付」の実態は学校ごとに違う
通信制高校の案内には「随時受付」「随時入学可」という表現がよく出てきます。ただし「随時」の中身は学校ごとに違い、無期限でもありません。 実例として、当サイトが募集要項を確認したN高グループでは次のようになっています。
- ネットコースの場合、転入学の受け入れ日は毎月1日が基本(入学から卒業までの流れの解説)
- ネットコースは随時、通学コースは応相談(編入・転入の解説)
- ただし2027年度生徒募集要項の注意事項では、1年次・2年次は1月まで、3年次は12月までと期限が明記されています
- 編入学の入学時期は4月・7月・10月・1月の年4回です(前掲の編入・転入の解説)
「随時」と書いてあっても、実際には受け入れ日・出願締切・学年ごとの最終受け入れ月があります。検討している学校の募集要項で、この3点を必ず確認してください。
学年別のタイムリミット
高1の場合。 年度途中では引き継げる単位がまだ立っていないことが多い一方、在籍期間は引き継げます。 単位は転入先で取り直せますが、失った在籍期間は取り戻せません(単位の詳しい扱いはFAQで説明しています)。
高2の場合(この記事のメインケース)。 高1で修得した単位を持って移れるため、単位面でも在籍期間面でも最も条件がそろいやすい学年です。詳しくは次のH3で説明します。
高3の場合。 転入自体は可能ですが、同級生と同じ3月に卒業できるかの分岐が月単位で決まり、受け入れの最終月も早く設定されがちです。何月に何をすべきかの逆算は学年別タイムリミットの記事で扱っています。
高2の転入が「遅くない」と言える理由
高2からの転入が卒業時期を守りやすいのは、感覚論ではなく計算で説明できます。
高校卒業に必要な修得単位は74単位以上です(根拠は次のH2で示します)。一方、履修は年間25単位前後で組む学校が多く、たとえばN高の募集要項に掲載されている標準履修モデルは1年次25単位です。
このモデルどおり高1を修了していれば、高2への進級時点で25単位を修得済みです。74単位まで残り49単位を、高2・高3の2年間で取ればよいことになります。年25単位ペースなら2年間で50単位となり、計算上は間に合います。
ただしこれは「高1を修了してから移る」場合の計算です。高2の年度途中で移る場合は、高2で履修中の単位の扱いが変わります(次のH2で説明します)。また、実際に何単位が認定されるかは転入先の判断です。この計算はあくまで見取り図として使い、実際の卒業時期の見込みは転入先の個別相談で確認してください。
単位と在籍期間の引き継ぎの仕組み
転入で引き継げるのは「修得が認定された単位」と「在籍期間」の2つです。まず卒業要件から順に見ていきます。
卒業要件は「74単位・在籍3年以上・特別活動」
高校卒業の要件は、法令と学習指導要領で次のように定められています。
- 74単位以上の修得:学校教育法施行規則第96条は、全課程の修了認定を「七十四単位以上を修得した者について行わなければならない」と定めています
- 在籍3年以上:学校教育法第56条は、高等学校の修業年限を「定時制の課程及び通信制の課程については、三年以上とする」と定めています
- 特別活動:高等学校学習指導要領(平成30年告示)の総則は、通信制の課程の特例として、ホームルーム活動を含めて卒業までに30単位時間以上の指導を定めています(全日制には別の標準が適用されます)
転入では、このうち単位と在籍期間の両方を前の学校から引き継いで、残りを転入先で満たしていきます。在籍期間は前籍校との通算で3年以上を満たせばよいため、転入して学校が変わっても、それだけで卒業が遅れるわけではありません。
引き継げるのは「修得が認定された」単位だけ
ここが最も誤解の多いポイントです。引き継ぎの対象になるのは、成績が付いて修得と認定された単位です。いま履修している最中の科目は、まだ単位として成立していません。
単位の修得認定は年度末に行われるのが一般的です。学習指導要領の総則も、各年次ごとに履修した単位の修得を認定することを「原則とする」としています。そのため、年度の途中で転入すると、その年度に履修していた科目は原則として引き継げません。 たとえば高2の秋に転入した場合、引き継げるのは高1までの修得単位で、高2の4月から履修していた科目はゼロからやり直しになるのが基本です。
一方で、学習指導要領の総則には「単位の修得の認定を学期の区分ごとに行うことができる」との定めもあります。学期ごとに単位を認定する学校に在籍している場合は、学期末までの単位が認定されてから移ると、その分を持って行ける可能性があります。 在籍校が学年制か、学期ごとの認定を行っているかは、担任か教務に確認してください。
転入のタイミングは「思い立った日」ではなく、単位の認定タイミングに合わせて選ぶと失うものが減ります。単位面で最も無駄がないのは、学年末に単位の修得認定を受けてから、年度替わりの4月に移る形です。認定前の3月に移ってしまうと、その年度の単位を丸ごと失いかねません。
何単位認められるかは、転入先が決める
前述の施行規則92条のとおり、転学の許可は「教育上支障がない場合」の校長判断で、単位も「修得した単位に応じて」認められる仕組みです。修得済みの単位が自動的・機械的に全部引き継がれることが保証されているわけではありません。
実例として、N高グループの募集要項の教育課程表のページには「転入学・編入学の場合も、前籍校での修得単位を加味し、標準履修モデルをもとに履修科目を案内しています」と記載されています。一方、同じ要項の注意事項には「前籍校の学習が加味される場合があります(在籍期間・修得単位)」という留保つきの記載もあります。何単位が認定されるかの一律基準は、当サイトが確認した範囲では公表されておらず、個別判断です。
だからこそ、出願前の個別相談で「成績・単位修得証明書を見せたうえで、何単位が認定される見込みか、卒業予定はいつになるか」を確認することが、転入先選びの実質的な最重要ステップになります。
転入に必要な書類
用語を整理しておくと、この記事では、いま通っている学校を「在籍校」、移った後から見た前の学校を「前籍校」と呼びます。
施行規則92条は、在籍校の校長が「在学証明書その他必要な書類を転学先の校長に送付しなければならない」と定めています。つまり転入の書類は、本人や保護者だけでは完結せず、在籍校に作成・発行を依頼するものが中心です。
具体的な書類は転入先が指定します。実例として、N高グループの2027年度生徒募集要項が転入学に求める書類は次の5点です。
- 学籍・就学状況証明書
- 成績・単位修得証明書
- 生徒の転学について(照会)
- 在籍証明書
- 在籍高等学校の教育課程表(コピー可)
いずれも在籍校が作成するものです。学校の事務処理には日数がかかるため、出願締切から逆算して早めに依頼してください。 依頼の際は「転校を考えている」と在籍校に伝えることになりますが、これは施行規則上も在籍校の校長が関与する正規の手続きであり、気まずさを理由に先送りすると時期の選択肢が減っていきます。
編入の場合も、書類の発行元は「かつて在籍していた高校(前籍校)」です。同じ募集要項では、編入学の書類は学籍・就学状況証明書、成績・単位修得証明書、教育課程表の3点で、転学照会と在籍証明は不要になります。退学から時間が経っていても証明書の発行は前籍校に依頼できるので、まず前籍校の事務室に連絡することから始めてください。
手続きの流れ(5ステップ)
- 情報収集と個別相談。 候補校の募集要項を取り寄せ、個別相談で「単位認定の見込み」「卒業予定時期」「受け入れ可能な入学月」を確認します。複数校を並行して比較して構いません
- 在籍校への意思伝達と書類依頼。 担任・教務に転校の意向を伝え、指定された証明書類の発行を依頼します
- 出願。 願書と書類を期限までに提出します。N高の例では、出願は入学希望月の約1カ月前が目安です
- 選抜。 通信制の転入選抜は書類選考と面接が中心で、学力試験を課さない学校もあります。N高の例では、ネットコースとオンラインキャンパスは書類選考(必要に応じて面接を実施との注記あり)、リアルキャンパスは筆記試験と面接試験(グループワークを含む)です。選抜の内容はN高の転入試験をまとめた記事で扱っています
- 合格後、入学手続きと履修登録。 在籍校の退学日と転入先の入学日が連続するよう調整します。ここが編入との分かれ目です
転入後の学習がどう変わるか(レポート・スクーリングの実際)は、N高に転入した後のレポートとスクーリングをまとめた記事が参考になります。
費用で見落としやすい3点
学費の総額比較は学校選びの段階で必ず行うとして、転入に固有の落とし穴を3つ挙げます。いずれも当サイトがN高グループの一次情報で確認した実例で、他校でも同種の仕組みがないか確認する価値があります。
- 入学金などの初期費用は、転入でも改めてかかります。 進級と違い、転入は新しい学校への「入学」だからです
- 入学時期を条件とする学費の軽減が、転入生は対象外になることがあります。 N高の例では、就学支援金の支給見込額をあらかじめ差し引いて請求する「支給見込額の先引き」の適用対象外の要件に「編入学、転入学の方」が明記されており、転入生は当該年度分をいったん全額納入する形になります。募集要項の注意事項によると、支援金は国の支給時期に合わせて後日還付されます
- 年度途中に入学した場合の諸費(施設費など)が月割になるか満額かは、明示されていないことがあります。 N高の例では、当サイトが確認した範囲では公式サイト・募集要項に記載が見つからず、個別相談での確認事項です
なお、授業料を国が補助する高等学校等就学支援金は通信制高校も対象です。転校した場合の手続きは学校経由で行うため、転入先への確認事項に含めてください。
転入にかかる費用の実額はN高の転入にかかる費用をまとめた記事で、学費全体の仕組みはN高の学費を全コース試算した記事で扱っています。
よくある質問
転入のメリット・デメリットを教えてください
メリットは主に3つです。①在籍期間が途切れず、通算3年の卒業要件に空白が生じません。②修得済みの単位を持って移れるため、卒業時期を維持しやすくなります。③環境を変えること自体が目的の場合、退学を経ずにそれを実現できます。
デメリットも主に3つあります。①年度途中の転入では、履修中だった科目の単位が原則引き継げず、学習が一部やり直しになります。②在籍を切らさないために、在籍校とのやり取りと転入先の手続きを並行して進める段取りが必要です。③転入先の学び方(レポート・スクーリング・登校日数)が合うかどうかは、入ってみないと分からない部分が残ります。両方を比べたうえで、単位の認定見込みを個別相談で確認してから判断してください。
全日制高校から通信制高校に転校できますか
できます。学校教育法施行規則第92条が、全日制・定時制・通信制の課程相互の転学を明記しており、修得した単位に応じて相当学年に転入できます。ただし許可するかどうかは転入先の判断なので、募集状況と受け入れ時期は学校ごとに確認が必要です。
通信制高校は本当に随時入学できますか
「随時受付」をうたう学校は多いものの、実際には受け入れ日(月1回など)・出願締切・学年ごとの最終受け入れ月が設定されているのが普通です。N高の例では、転入の受け入れは毎月1日が基本で、1年次・2年次は1月まで、3年次は12月までです。「随時」という言葉だけで判断せず、期限を募集要項で確認してください。N高の時期の詳細はN高の転入はいつまでかをまとめた記事で扱っています。
高1ですが、転入すると単位はどうなりますか
高1の年度途中では、まだ修得認定された単位がないため、引き継げる単位はゼロか、ごくわずかになります。それでも在籍期間は引き継げるため、退学して空白を作るより転入のほうが卒業時期への影響は小さくなります。単位面だけを見るなら、在籍校の単位認定のタイミング(学年末または学期末)の直後に移るのが最も無駄がありません。
転入と編入はどちらが有利ですか
選べる状況なら転入です。在籍期間が途切れず、入学時期の選択肢も広いためです。編入は「すでに退学している」場合の手続きであり、有利・不利というより状況で決まります。退学を検討している段階なら、退学届を出す前に転入先を探し始めることをおすすめします。
すでに退学しています。編入と高卒認定はどう違いますか
編入は高校に入り直して「高校卒業」を目指す道です。一方、高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)は、文部科学省によると「高等学校を卒業した者と同等以上の学力があるかどうかを認定するための試験」で、合格すると大学・短大・専門学校の受験資格が得られます。ただし高卒認定に合格しても、高校を卒業したことにはなりません。 最終学歴として高校卒業が必要か、進学の受験資格があれば足りるかで選択が変わります。